珍オーダーから組み立てるヘアデザイン

小顔で首が長く見え、スタイルがよく見えるようなバランスのヘアデザインを。
こんばんは。ジャッキー・チェンです。
美容室へ赴き、受け付けを済ませて荷物を預ける。席に案内され始まるコミュニケーション「カウンセリング」
お客様サイドからは「オーダー」の時間とも言えますね。
もう今は長い付き合いのお客様が多いので、大まかな雰囲気だけ聞いてあとはお任せ、ってパターンも多いです。
しかしアタクシも20年くらい美容師やってきてるので、それはいろんなオーダーを受けました。
業界入った頃はまだ単一的な流行がある時代で、○○パーマとかホワイトメッシュ、芸能人とかだと安室奈美恵やPUFFY、藤原紀香や浜崎あゆみなどは多かった印象があります。
メンズでもキムタクとかベッカムとかのブームありましたが、同性には厳しいことで定評のあったアタクシは「顔が違うから」と一蹴してました。
僕フェミニストなんで。
そんな中でも特に覚えてる「珍オーダー」
大概のことに動揺しないし、困った経験もあまりないのですが、この2つだけは悩まされたオーダーなので是非ともご紹介したいと思います。
・あの人みたいな感じにしてほしい
先述したように、芸能人やモデル、アナウンサーなどの髪型のマネをする方は珍しくありません。
ちょっと難易度高めだと、つり革広告で見た人の髪型、なんてのもありました。
そういった場合、自分にとって難儀なのは、僕は高校くらいからほとんどTVを見なくなってしまったので、そういった人達の現在の髪型がわからないってことです。
今でこそネットで検索かければなんとかわかりますが、ネットのない頃は雑誌でその人が載ってないか探したり、俗な話題に詳しいスタッフをとっ捕まえて聞いたりと苦労したものです。
とある日、例えネットがあったとしても見つからないであろう人みたいな髪型にしたい、というオーダーをいただきました。
「今日はどんなイメージにしたいですか?」
「さっき信号待ちしてた時に見た人の髪型がすごいステキだったんです。それにしたいです。」
このオーダーに対して「かしこまりました!」と即座に応えれるスキルを持つ美容師さん、いるんですかね?
美容師とは、一体どれほどまでの情報を網羅してなくてはならないんでしょうか。
そのお客様とすれ違った人まで把握していると思ってらっしゃるようです。
ご期待に応えられず本当に申し訳ないと思いました。いや、思ってたまるか。
もうあとは答え探しの旅です。
長さを聞いてヘアカタログから近いイメージを一緒に探す作業。
カウンセリングが始まり40分ほどが経過した頃、そのお客様の一言で事態は一転しました。
「なんか記憶がおぼろげになってきた」
ナイス。
そう、人の記憶なんてのは曖昧で儚いものです。
一目見ただけのものを細部まで記憶してることなんて中々に難しく、その上いろんな髪型見せられたら確実に脳が混乱するでしょう。
その前にこのオーダーで僕の脳が混乱しかけてたんですが。
長さとか前髪とかの雰囲気は大体わかったので、シルエットやカラーは似合うよう提案をして無事喜んで帰っていただけました。
・こんな感じのパーマかけたいんです
今やスマホでやりたい髪型やヘアカラーの画像を保存したりスクショを撮って担当者に見せる、という人も多いかと思います。
そういったツールがなかった時代、いわゆる「切り抜き」をお持ちいただく方が多数いらっしゃいました。
芸能人やモデル、はたまたヘアカタログなどで見つけたやりたい髪型を、文字通り切り抜いて持ってくることです。
「パーマかけたいんですですけど、イメージの写真が見当たらなくて、恥ずかしいんですけど書いてきたんです、コレ、、、」
ほう。これは「切り抜き」の中でもかなり上級なオーダーの仕方。
イラストから雰囲気を読み取って、それに近づけるようなヘアデザインを考える。
おもしろい。これは中々におもしろく、やりがいのあるオーダーだ。
ちょっとウキウキしながら、手渡された2つ折りのブロックメモの紙を広げると…
「ん?紙に陰毛ついてる?」と思い、手でササっと払う仕草までしてしまいました。
予想のナナメ上をいくイラスト。いや、イラストというより落書き。
この写真は当時のを思い出して僕が書いたのですが、多分かなり再現率高めです。マジでこんな絵でした。
「なんか頭の中にはイメージがあるんですけど、パーマの感じがそんなウェーブなんです。」
キミが頭の中で陰毛を思い描いたわけではなく?
イメージがおぼろげなのか、画力が極度に低いのかわからないけど、とにかくこのラクガキからなんとか情報を読み取り
・カールではなくウェーブなので平巻き?
・でも完全にウェーブなら何本か書きそうなのでナナメ巻き?
・ウェーブの強さはほぼ均一なので、中間根元巻きか?
と、思いつく限りの再現への手段を構築し、全身全霊を込めてパーマ施術をした結果、喜んで帰っていただけました。
今でも付き合いのあるお客様で、時折思い出話として話題に上がります。
たまに写真持ってくの恥ずかしいっておっしゃる方がいらっしゃいます。
「顔が違うじゃん」とか思われたらイヤだ、とか思うようです。
そんなこと全然思わないですよ。(但しメンズ除く)
写真とかはお互いが頭の中でイメージしてることを一致させる通訳みたいな役割だと思っていただければ大丈夫です。
ヘアカラーとかでもネーミングだけだと、お互いの頭に浮かぶものが微妙に違うことも多いですし。
そのまんまの髪型ではなく、そのイメージを表現でき、尚且つ似合うような提案をさせていただきますので、安心してお持ちください。
そして難易度の高いオーダーでも、できる限りのことを精一杯やらせていただきますので、珍オーダーお待ちしております。
まぁあと個人的に困ると言うか「ムリ」って思うオーダーは、メンズのお客様から「モテる感じにしてほしい」ですね。
そんな髪型知ってたら自分が率先してするわ!